第3回 雨水ネットワーク会議 全国大会2010in松山
雨の遍路道 空、山、里、海、そして空 ~水と人との縁を求めて~
開催日:2010年 8月5日・6日
会場:松山市総合コミュニティセンター
「水」。
それは私たちが生活するためになくてはならないものです。
その水のほとんどはどこからやってきているのか?
それは、空から降ってくる「雨」です。
近年、その雨の降りかたが変わってきています。
ゲリラ豪雨による都市型洪水や
極端な少雨による渇水などが、
さまざまな分野に影響をもたらしています。
そんな雨とうまく付き合っていくまちづくりをしようと、
情報交換や交流活動を行うために開催される「雨水ネットワーク会議」。
今年、第3回全国大会の開催地は、『坂の上の雲』のまち松山です。
雨水を生活に取り入れ、
雨と関わることを楽しめるようにとの想いを込めて、
「雨水的生活アメアメプロジェクト」という大会愛称を設けました。
「雨」の大切さを再認識するとともに、
「雨」とうまくつきあっていくまちづくりを実現するため、
みんなで一緒になって考えてみませんか?
松山宣言
四国には弘法大師・空海によって開かれた八十八ヶ所の札所を巡る遍路道がある。年間30万人ともいわれる巡礼者は、1,000km余りの行程を旅することで、自らのけがれを浄化し願いを叶えようとするのである。その旅は一度だけとは限らない。百たびを超えて巡礼する人もいる。そして、旅の途中では「お接待」を受け、地元の人々との出会いの縁を作り上げる。
この過程は、地球上の水が40数億年前から何千億回と循環を繰り返し、生命を育んできたことと重なるものである。また、弘法大師は宗教家であるとともに、水に関わる事業の先達者でもあり、わが国最大のため池[満濃池(まんのういけ)]の本格的改修を手がけ、松山では「杖ノ淵(じょうのふち)」 という湧水を発見した。そしてこれらは今もなお、重要な水資源施設として、また人々の憩いの場として利用されている。このように、水は空、山、里、海というスケールの大きな遍路道を循環して人々に恵みを与え、また、水と人との縁は、様々な形で今もいたるところに残っているのである。
しかしながら、近代以降の水に対する営みは、例えば、ダムによる洪水制御・用水管理、農業用水のパイプライン化、都市域における河川の改修や下水道の整備など、できるだけ効率的なシステムの中で人為的に制御・管理する方向で行われてきた。そして、これはこれで我々の生活に利便性と快適性をもたらし経済発展に寄与してきたが、その一方で、我々は人と水との様々な関わりを疎遠にしてきたのではないだろうか。
古来、わが国の水利用の根底には、上流と下流、すなわち流域という概念が存在し、水は上流から下流に流れることによって、山、里、町、海を結びつけるだけでなく、そこで生活を営む人々をも結びつけてきた。今後、我々は、さらなる深刻化が予想される水に関わる諸問題、例えば、人口の増加とその偏在によって生ずる水資源問題、農山村の過疎化に伴う流域水土保全機能の劣化、酸性雨・海洋汚染等に代表される環境問題の広域化などに対処するために、改めて流域そして地球規模の水循環の重要性を認識し、水の特性と循環場の機能を十分に活かした管理システムを構築することが求められている。
また、水循環は、様々な物質の運搬・拡散を担うことにより水質や水域景観などの水環境を左右し、また、蒸発散による太陽エネルギーの再配分を通して気象環境を支配するなど、地域及び地球環境の形成に大きく寄与しているが、産業革命以降の人類活動は、水を含めた様々な物質の循環速度と循環過程を変化させた。その結果として、我々が直面している最大の問題が、地球温暖化とそれに伴う異常気象による豪雨や干ばつである。松山市でも、平成6年(1994年)には10ヶ月間の給水制限、4ヶ月間の時間断水となる大渇水に見舞われ、一方で、平成16年(2004年)に愛媛県を襲った集中豪雨は、県内各地で多くの土石流や斜面崩壊を発生させるなど甚大な被害をもたらしたのである。
この様な状況を背景に、平成22年盛夏、松山市において第3回雨水ネットワーク会議全国大会を開催した。会議には市民、企業、行政、研究者が全国各地から参加し「雨の遍路道 空、山、里、海、そして空 ~水と人との縁を求めて~」をテーマに、水の確保と制御のための取り組み、雨水の循環に関わる森や農地の役割、町における雨水利用等の水循環再生の試み、陸水と海との関わりなど、様々な観点から議論を尽くし、理解を深めた。これらの議論を踏まえて、ここに参加した我々は、水に関わる諸問題の解決のために、以下のような活動を推進することを宣言する。
- 「山」が持つ水源溜養の働きを正しく理解し、これを広く啓発・発信するとともに、 森林を適正に管理する活動に取り組みます。
- 「里」における雨水の利用、制御に関する様々な営みを理解し、雨水との共生を図り、自然環境の保全に取り組みます。
- 雨水の浸透・貯留・利用を促進し、「町」における水循環の再生を図り、渇水・洪水 災害の軽減・防止、水環境の保全・再生に取り組みます。
- 水循環における「海」の役割および陸と海とのつながりを理解し、陸と海とのつながりを理解し、陸水の保全を通して海の環境を守る活動に取り組みます。
わたしたちはこの宣言を基に、地域の風土を創る水の役割を知り、市民、企業、研究者、行政が連携を持って、流域における健全な水循環を構築することにより、未来にわたり美しい自然とわたしたちの生活を守りつづけていくため、松山から動き出します。
平成22年8月6日
「第3回 雨水ネットワーク会議全国大会2010in松山」参加者一同