第4回 雨水ネットワーク会議 全国大会2011in大阪
琵琶湖から広がる流域の雨水活用
開催日:2010年 8月5日・6日
会場:大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
ネットワークで地域・世代をつなごう。関西から全国ヘ発信するこれからの「雨水活用」
昨年10月より、第4回となる雨水ネットワーク会議全国大会を関西で開催するために、大阪・京都・兵庫・滋賀の雨水利用にかかわる市民団体が実行委員会を組織し、準備を進めてまいりました。テーマは「琵琶湖から広がる流域の雨水活用」とし、「琵琶湖から大阪湾へとつながる流域全体での雨水活用を考える場」、また「雨にはじまる水の大切さを次世代を担う子供たちに伝えていくための環規学習の場」にしたいと考えております。
さる3月11自発生の東日本大震災は未曾有の事態をもたらしました。被災者の皆様に衷心よりお見舞い申しあげると共に被災地の速やかな復興を願うばかりです。私たちは今回のような強大な自然災害、日々の生活を支えるエネルギー問題に、どう対処していけば安心・安全な暮らしを獲得できるのでしょうか?これまで、見過ごされがちであった“雨水活用”に正面から取り組むことによって、いくつかの確実な答えが得られるのではないかと思います。世代を越えたくさんのみなさまに是非ご参加いただき、ここ関西から雨水活用を通じた交流が水紋のように広がりますことを願っております。……雨水に感謝!!
大阪宣言
2008年、神戸市都賀川で起きた出水事故の悲劇で、水循環を無視した上流の開発が、下流にいかに深刻な洪水被害をもたらすのか、強く学びました。「治水」の発想を転換し、流域全体で、雨水の貯留、利用及び浸透すなわち“雨水活用”を推進する。そして流域全体で、水循環の再生・保全を原則として開発を行うことが、これからの街づくりの基本としていかなければなりません。
ライフラインに全面依存した都市が大地震などの災害にいかにもろいのか。阪神淡路大震災、中越地震、そして今年3月の東日本大震災を教訓として、防災の発想を転換し、流域全体で雨水や地下水などの小規模で分散した水源をライフポイントとして確保する。雨水の活用が、災害に強い街づくりの基本となりうるのです。
21世紀は、気候変動で大渇水も危惧されています。水源を上流のダムへ依存するだけではなく、利水の発想を転換し、流域全体で雨水や地下水などを利用した身近な水源を作り出す。雨水を活用して水源の独立を目指すことは、渇水に強い街づくりの基本となりうるのです。
今回の「第4回雨水ネットワーク会議全国大会2011 in大阪」は、琵琶湖、淀川及び寝屋川の水系はもとより、全国のさまざまな水系において、雨水活用に取り組む産官学民の主体を結集し、洪水、災害や渇水といった直面する大きな問題について、“流域”という観点から、雨水の管理や活用方法、またそれらの現状や課題についての議論が交わされました。
また、分科会では、福岡の樋井川、兵庫の武庫川、大阪の淀川など、流域における市民や行政による雨水活用の取り組みの報告や議論から「流域雨水ネットワーク」を考え、今後法制化を目指している水循環基本法や雨水法、雨水規格といった「雨水活用法制度」を考え、「雨水活用のアジア交流」として、雨水活用の技術や文化の交流を報告し、先人の知恵を学びました。
雨水の活用を学び、ひとり一人が実践していくには、子どもの頃からの環境教育が必要です。しかし、これまでの環境教育においては、雨に関する教育があまりにも不十分でした。今回の大阪大会に合わせて、全国で行われている雨に関する環境学習プログラムを取りまとめました。これを大いに活用し、新たなプログラムへと発展させ、充実した、雨の環境教育へと進化させていく必要があります。
私たちは、今回の「第4回雨水ネットワーク会議全国大会2011 in大阪」の成果を踏まえ、洪水に、災害に、渇水に強い街づくりを流域全体で考え、雨水活用の考え方を着実に社会の仕組みに根付かせるため、以下のように宣言し、今日から雨水のネットワークを活かし、流域全体で活動を開始します。
- 飲水思源(注1)の発想に学び、下流が上流の水源に感謝し、上流が下流の水系の洪水を思いやる、「流域知水(りゅういきちすい)」(注2)の運動を提唱します。
- 流域全体で、“雨水活用”による水源の自立を目指し、また、その水源を利用して緑を保全し、雨水を積極的に浸透させ、流域に豊かな水循環を取り戻します。
- “雨水活用”を促進するための法制度や社会制度づくり、“雨水活用”の技術の発展や製品の規格化を推進する活動を展開します。
- 内外の先人たちの知恵と文化を掘り起こし、「流域知水」の取り組みに活かしていきます。
- 雨水のネットワークを活かして、流域や流域間での交流を深め、雨の環境体験学習プログラムによる雨の環境学習を推進し、地域や学校で雨水キッズを育てます。
- 酸性雨や雨の汚染は、私たち人間が原因です。この現実をしっかりと受け止め、汚染の元を断ちきり、未来にきれいでおいしい雨水を伝えます。
(注1) 水を飲むときには水のもととなる水源のことを考えるという意味
(注2) 流域の渇水及び洪水対策は、地域から流域全体の水のことを知ることから始まるという意味
以上
2011年8月6日
第4回 雨水ネットワーク会議全国大会2011 in大阪参加者一同
緊急提案「雨水の汚名を晴らす!」
私たちは、福島第一原発事故による放射能汚染をとても心配しています。今回の原発事故によって、大気中に放出された放射性物質を含んだ雨水が、大地に、川に、海に、私たちの街に降り注ぐ結果となってしまいました。
でも、雨水は健気に放射性物質で汚染された大気を洗ってくれているだけなのです。雨水が大地や川や海を汚染するのではなく、雨水自体が放射性物質によって汚染されてしまったのです。
大気を洗うという大きな役割を果たした結果、汚染されてしまった雨水を悪者のように扱うのは、非常に残念なことであり、間違った行為と言えます。雨水は“汚染”という濡れ衣を着せられたに過ぎないのです。太古から生命を育んできた雨水が、未来の人々や生き物たちの生活環境を奪ってしまうと誤解されることは、雨水活用の普及に関わる私たちだけではなく、全ての人々にとって大変悲しい事態です。
また、空からの恵みである雨をその場で受けとめて貯留、浸透、利用する雨水活用は、遠方のダムなどから水を引いてきて、浄水場で処理して家庭に送水する水道水に比べ、膨大なエネルギーを必要としません。私たちは、今回の原発事故を契機に、安心で安全かつ持続可能な社会を実現していくために、雨水活用をエネルギーという観点からも見直す必要があります。
私たちが今すべきことは、雨水が被ったこの汚名を晴らすこと、間違った情報を正すことなのです。雨水活用を広める活動をしている私たちだからこそできることを、今すぐにでも始めましょう。エネルギーという観点からも雨水活用が有効であることを大いに広めていきましょう。
今回の全国大会を起点として、放射能汚染などによる雨水の汚名を晴らし、雨水活用のさらなる普及を図るために、今大会の参加者1人ひとりが、また雨水ネットワーク会議全体で、以下の活動を継続的に行うことを提案致します。
- 安全かつ安心な雨水活用方法や技術の普及と開発を促進する
- 雨水の水質や放射性物質について、正確な情報の整備と伝達を行う
- エネルギーという観点での雨水活用の有効性の啓蒙と普及を促進する
以上
2011年8月6日
第4回 雨水ネットワーク会議全国大会2011 in大阪実行委員会